ヤマハSR400(500)のレビュー

SR400

SRをこれから買いたい方向けに。SRに20年程乗り続けてきましたが、実際どうだったのか。現在は500に乗っています。長年乗り続けているんだから「良い所が多いんだろ?」と思われるかもしれませんが、不満も割り切ってこんなもんだろうと乗っています。

悪い所

良い所(好きな所


万人受けするバイクでは無い

製造年は約40年累計販売台数は12万台以上と250cc超ではかなり売れたバイクと言って過言は有りません。しかし空冷単気筒、そして40年以上前の設計は良くも悪くも癖が強いと言っていいと思います。そこを割り切れるかどうかが、合わなくて降りてしまうか、乗り続けられるかの分かれ目になると思います。

初期型SR400(ブレーキディスクが左)

何故癖が強いのか

最近は空冷エンジンは250cc超は、ホンダGB350やメグロK3、BOLT等数える程しか無くなってきています。空冷エンジンのデメリットは排ガス規制や騒音に厳しい事、パワーを稼げない事等です。メリットは構造をシンプルに出来る、重量やコストを抑えられる事です。排ガスや騒音はどんどん厳しくなっていくので、対応するにはキャニスターをつけたり、コストや重量がかかる方向に行かざるをおえません。シンプルが売りと言えるのに、シンプルに出来なくなるというメーカーの苦悩が垣間見えます。

GB350 同 OHC空冷単気筒

クラシックなバイクと地位を確立し、見た目も現行車には中々無いノスタルジック差は一周回ってかっこいいと思う方も多いかもしれません。SRは78年発売なのですが、当時のデザインを見ればメッキのフェンダーやテールのデザインに18インチタイヤは最新鋭で無くとも、当たり前のデザインでした。

77年発売の ホンダ ホーク2
78年 ホンダ GL400

遅い

400CCクラスとしてはトルク(加速力)は低く無い物の、最大出力(最高速)が圧倒的に低く、精々140㎞/hちょいで頭打ちになります。4気筒の400CCクラスならば、リミッターが作動する180㎞/hまで出ますので、高速道路での追い越しや100㎞/hの巡航の余裕の無さに繋がってきます。

SR400 Final EditionHONDA CB400SFKawasaki Ninja 400
24PS/6,500rpm56PS/11000rpm48PS/10000rpm
2.9kg-m/3,000rpm4.0kg-m/9500rpm3.9kg-m/8000rpm

高速道路をメインに長距離走行するような人には向かない

スピードメーターは160㎞/hまでしかない。燃料警告灯のみ。

高速道路では上記の通り最高速に余裕が無いのでおのずと高回転で走る事になります。単気筒の良さである出足の良さ、瞬発力を発揮する場面が無い。デメリットで有る振動ばかりが高回転で増幅されるので、快適とは程遠いです。長時間乗ると振動で手がしびれます。それが好き、または気にならない方は問題有りませんが、そういう乗り方をメインにする人はリッターバイクや同クラスでも2気筒以上を選ぶべきです。振動を打ち消す為に同じ空冷単気筒のGB350はバランサーががっちりと付いています。それ程振動と言うのは乗り手を選ぶ要素の一つだと思います。また単気筒のメリットで有る燃費の良さが有りますが、新東名のような100㎞/h以上を使ってスロットルを全開にするような、追い越しを繰り返して走っていると燃費が一気に悪くなりますタンクは12ℓ程度とミドルクラスでは少ない方ですし、燃料計も有りません。(FIは残り2.2ℓ燃料警告灯のみ)また下道では満タンで300㎞走行出来ていたのが、高速では200㎞も走行すると給油タイミングになるという事が有りました。場所によっては次のSAのガソリンスタンドまで150㎞離れているポイントも有りますので、燃費の悪化によるガス欠を考えながら走行するのはストレスになると思います。

排ガス規制の対応により、本来の良さが弱くなってきている

バイクのFI車にも乗っていますし、キャブだからFIだからと言う偏見は持っていないと思いますが、元々が強制開閉のVMキャブから始まって、扱いやすい負圧のCVキャブ。そして最初のFI化、そしてキャニスターの追加された最後のFI化と変わってきました。FI化では振動が少なくなった、最大トルクはほとんど変わらずに低回転型のセッティングになって乗りやすくなった。しかし最終型はパワーダウンも大きいし、スロットルが物理的に全開にならないようになっていたりします。これはちょっとあり得ないなと思います。正直言って最終型はメーカーが苦肉の策で出したのではと思っています。振動が辛く感じる走りはしない、高速は基本乗らないと割り切って楽しんでいるので、自分は逆にSRの癖の強さが好きなので、物足りなさを感じてしまいます。また最近のバイクに全般そうなのかもしれませんが、FI化してからはタンクを外すのが大変になり、整備を気軽に学びやすいバイクでは無くなっているのも感じます。

キャニスター
VMキャブ
CVキャブ

価格の高騰

生産終了後の2022年5月に記事を書いていますが、平均中古価格(未登録新車含む)が約75万円になっています。78年の新車価格は35万円、最終型は約60万円。限定モデルやファイナルエディションが有るとは言え、強気すぎませんか?ちなみに国内向けが生産終了しただけなので、タイでは販売されています。正規輸入じゃなく保証等の無い並行輸入をする業者が出てくれば、価格が落ち着くかもしれません。

タイ仕様

設計が古い

フレームにオイルタンク
グリス注入口

元のベースがオフロード(パリダカを走るようなラリー車)のXT500をベースに開発された1978年発売のバイクです。オフ車ベースでエンジン高を稼ぐ為に、ドライサンプでフレームがオイルタンクになっていて、小さいオイルパンが有るだけです。また今では考えられないような手間がかかる部分が何か所か有ります。まず有名なのがスイングアームのピボットシャフトとリアタイヤのハブのグリスアップです。グリスが切れるとシャフトはくっついてしまいますし、ハブは摩耗が一気に進みます。上記にも書きましたが、空冷OHC単気筒と言う一番シンプルなエンジンですが。大きな問題で有る振動を抑えるバランサー機構が全く無い為にそのままでは振動でネジが緩んだり壊れる為、防振のゴムがあちこちに入っています。ゴムが劣化すればダメージが出ます。自分の場合はメーターが割れたり、スイッチが飛んで行ったりしました。試乗した同じ空冷OHC単気筒GB350はバランサーががっちりとついているので、SRみたいに変な所にゴムは入っていませんでした。ただ個人的には振動は良し悪しだと思っています、GBは物足りなさを感じましたし・・・。そして今時あり得ないキック始動のみ。信号待ちや右折、発進でのエンストは今でも焦るので、気を使います。

ゴムがあちこちに
XT500 エンジン回りがそっくり。
部品点数の少ないエンジン

良い所

軽い方

車両重量は175kg。空冷OHC単気筒というシンプルこの上無いエンジンなので、重い鉄のフェンダーやフレーム等、設計の古さをある程度カバーするようなくらいの軽さは有ります。モタードはもっともっと軽いですが・・。軽さは高速道路等の直進安定性、風で煽られた時のどっしり感等のデメリットは有りますが。個人的には軽さは正義だと言うくらい大きな要素だと思っています。軽いということはブレーキやタイヤに負担がかからないので、摩耗が少なくランニングコストが抑えられます。物理法則に従って止まる、曲がる、加速する。全てにおいて有利です。取り回しのしやすさは、Uターンもしやすい。

カワサキ KLX230 S 136kg 単気筒のメリット=オフ車にピッタリ

スピードを出さなくても楽しい

同クラスの400ccのバイクはあっという間に制限速度まで加速し、気づけば+20km/hの一発免停の速度で走行していても、まだまだ余裕があります。一般道ではSRでも出足が良いので、流れをリードするような走りは全然できます。ただその辺で個人的にはSRの嫌な振動が増幅されていくので、「もういいや」とある意味スピードを抑制される要素の一つです。峠の登り等でリッターバイクの加速について行く事は全く出来ないので、張り合おうなんて思いません。マシンの限界が低く諦めがつくので、結果周りに影響されずマイペースで走ろうという気持ちになり。飛ばしてもエンジンの頑張りに比べ、他のバイクよりも速度が対して出ていないなんて事も。筆者はSRにはETCをつけておらず、高速道路を使って目的地へ急ぐような旅よりも、多少遠回りでも道中を楽しめるような道を選んで走ります。SRの良さは単気筒の特徴そのままだと思います。シンプルなので軽い、高回転の最高出力よりも低回転でのトルク燃費の良さ。特異なゾーンは0からの発進、スロットルを開ければ俊敏に反応する瞬発力。良くも悪くも振動の強いエンジンが、低回転では心地よく地面を蹴るようなパルスと共に、他のバイクには無い楽しさを与えてくれます。

峠のような低速でコーナーから脱出して加速するような場面は、気持ち良いの一言です。スピードを出す必要は全くありません。

部品がいっぱい有る

FI化で大きく変わった部分は有りますが、エンジンや外装は共通部品も多く他の車種と比べてもかなりのカスタムパーツ、また純正の中古部品が有ります。40年以上前の設計のこのバイクは、今のバイクと比べてしまうと不満が有ります。クラッチやスロットルは重いし、ポジションは中途半端に感じたり、身長によっては窮屈に感じたり。でもクラッチが重いならレバーを変えてみたり、ポジションならばバックステップやハンドルを変えてみたり。加速が不満ならば水冷では厳しいボアアップも650cc位までカスタムしてくれるお店も有ります。販売台数が多かったので、安い珠も有りますし、入口から広くそして中も深くて大きい、懐の大きいバイクでもあります。

願わくば、是非一度は試乗を

なんだかんだ20年以上乗り続けられているのは、自分の性に合っているのだと思います。興味のある方は是非一度エンジンをかけて跨らして貰って、出来れば試乗してみて欲しいです。合う人も合わない人も感性は人それぞれですので、なんでも一度は挑戦してみないと解らないもんです。

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